ティファニーブルーのオペ衣に身を包み、牛舎に佇む男が1人。
せんせぇ、今日は何のオペですかーぁ?
が、いつもと様子が違う。何だなんだ?何が違うン?手もとにメスもなければ、鉗子もない。はたしてその手に握りしめているのは……
ペンチ!! しかも軍手!
と、つかみの小芝居はこのぐらいにして(笑)、「これから削蹄するから、撮影しない?」とお声がかかったので、今回は牛の削蹄の模様をお伝えします。
とはいうものの、今日は長靴も持ってきていないし、おろしたての真っ白スニーカーで出社しちゃったワタシ。ウ〇コの落ちているであろう柵の中に入るのは必至と思われるのですが、白スニーカーの汚れよりも「牛の削蹄見たい」の好奇心の方が勝ってしまいました。これがジャーナリスト魂というやつでしょうか(は?)。
それでは、えーい!と清水の舞台から飛び降りる覚悟で、真っ白スタンスミスを犠牲に撮影した「魂の映像」をとくとご覧ください。

まずは削蹄する牛をしっかりと固定し、

蹄表面の汚れを取り除くことからスタート。
この道具、お好み焼き用のヘラかと思ったら、左官屋さんが使う道具とのことでした。牛の世界は相変わらずワイルドだろぉ?
同じヘラで趾間に詰まってる汚れも取り除きます。
間に入れてホイホイホイと泥をかき出す作業。うっわー、コレだけやりたいゾ!

いよいよ本番。削蹄が始まりました。
わきの下で脚をグゥッと挟み、カマでシュワンシュワンと削っていきます。中腰での力作業。ものすごーい重労働です。

みるみるしたたり落ちる汗。オペ衣を脱ぎ捨てます。働く男の汗は美しい!

ほかの牛さんも興味津々。次はアナタの番よ。
右手でシュワンシュワンと削ったと思ったら

すかさず左手に持ち替えてまた削る。
削る角度や場所に合わせて右手と左手、両方の手を使って器用に削っていきます。オペの時とはまた違う、匠の技であります。

続いてペンチのような道具でバッチンバッチンと先端を切り落とし、形を整えていきます。
こうして「削る」と「切る」を少しずつ何度も繰り返し、ちょうど良い具合に仕上げていくんですね。やりすぎると(深爪っていうのかな?)炎症をおこし、蹄病になってしまうので、やめ時の見定めが肝心のように見ていて感じました。
削蹄後の脚はこんな感じ。

仏師のごとく、できばえを見つめる先生。思わず「アナタにとってプロフェッショナルとは?」と聞きそうになりました。頭の中でスガシカオが歌ってます。
市場へ出す牛は健康であることはもちろん、見栄えも肝心。高く買ってもらうために、削蹄も大切な作業のひとつなのだと実感しました。人間も牛も「おしゃれは足元から」なんですねぇ。
ん?おしゃれは足元から?そーだ、帰ったらスニーカー洗わなくっちゃ!……見事な伏線回収(笑)。
※ 9月28日追記
先ごろ開催された弊社獣医師対象の削蹄講習会で、グラインダーを使用する際の注意点とデモンストレーションが行われました。その模様の動画をYoutubeで公開しました。興味のある方はぜひご覧ください。