「今から帝王切開するから良かったらおいでー」のお誘いをいただきました。
「初日の中耳炎治療から帝王切開だなんて、牛初心者にいきなりハードル上げすぎーっ」と一瞬戸惑いましたが、めったにできない貴重な体験と意を決し、カメラぶら下げテクテク牛舎へ。
ところで、牛の帝王切開ってどういう姿勢でやると思いますか?ワタシはてっきり牛を仰向けに寝かせて、下っ腹にスパーッとメスを入れるものだと思ってました。暴れるといけないので、全身麻酔はマストよねー。
ところが…。

お目々パッチリ。
しかも、
フツーに立ってるし…。
見事に期待を裏切られました。顔だけ見てたら脇腹をパックリ開かれてる最中だなんて想像もつかないほど、穏やかな表情の牛のお母さんです。早くも目からウロコがボトッ。
では、いよいよ本題にはいりますよ。
まずは執刀医のご紹介。本日の担当医は…
さてさて、ここからは閲覧注意。血に弱い方はお引き取りくださいねー。
ピーンと張り詰めた緊張感の中、30センチほどの切り口に手を入れて…
脚つかまえたーっ。
オレンジ色の産科バンドを脚に巻きつけて引っぱると…
生まれたーっ。カメラ目線の男の子ちゃん!
すぐさま人工呼吸器(通称:シュポシュポ)で羊水を吸い出します。トイレが詰まった時のアレを想像してください(笑)。
子牛の処置はスタッフにまかせ、すぐに傷口の縫合に取りかかるマサユキ先生。
チクチクチクチク。
シュパパパパパパ。
チクチクチクチク。
あらら、おじょーず!(←完全に主婦目線)
終盤になると少しリラックス。いつもの穏やかな表情が戻ってきましたよ。
最後の糸をパチンと切って、帝王切開無事終了。
ついさっきまでパカーッと開いていた傷口がキレイに縫い合わされました。そして「黒毛和牛の地肌は白かった」という事実に、またもや目からウロコが…。
さて、今日のは体外受精卵移植で授かった牛さんだったので、計画的に行われた帝王切開手術だったとのこと。自社の牛舎で、スタッフも装備も万全の状態で行われました。
でもこういう恵まれた環境での帝王切開手術はごく稀であろうことは、牛ビギナーのワタシでも容易に想像できます。
実際の帝王切開手術は、酪農家さんの牛舎で、難産の末に決断を迫られたり、胎子に異常が見つかったりして、急きょ始まることがほとんど。アシストするのは農家さん1人だけだったり、充分な設備が整っていなかったり。深夜や真冬の早朝に呼び出され、眠い目をこすりながら執刀することもあるでしょう。
どんな環境におかれても、牛さんの命を救うべく果敢に立ち向かう家畜獣医師さんて、あらためてスゴイ!
ところで、
せんせぇ、
お願いです。
時間がありましたらぜひ、
こちらの縫合も…。